16.歯磨剤について
1.歯磨剤の働き
歯につく汚れは、大きくわけて2種類あります。ひとつが歯科疾患の原因となるプラーク(歯垢)。もうひとつが食べかすや茶しぶなど食べ物に由来する着色汚れ(カラーステイン)です。特にプラークはネバネバと歯の表面にこびりつき、うがいくらいでは落とすことができません。しかし歯磨剤を使ってブラツシンク(清掃)することで、プラークの除去効果を高めることができます。また、歯ブラシだけでは落とせない茶しぶなどの着色汚れも、歯磨剤を使うことで落とすことができます。歯磨剤にはさまざまな成分が含まれており、歯の表面を傷つけることなく汚れを落とすと同時に、細菌の除去や繁殖抑制の効果もあります。このほか歯磨剤には口臭予防、口中を爽快にする、歯を白くするなどの働きがあります。さらに薬効成分を配合し、虫歯や歯周病の予防効果などを高めています。
2.歯磨剤の効能効果
●プラーク(歯垢)を除去する
プラークとは歯の表面につくネバネバした汚れで、その正体は細菌のかたまりです。プラークは虫歯や歯周病の原因となるばかりでなく、口臭や歯石の沈着にもつながります。歯と歯ぐきのトラブルを防ぐには、プラークの除去が第一。歯磨剤を使ってブラツシンク(清掃)することでプラークが効果的に除去でき、再付着しにくくなります。また、液体歯磨や洗口液も、プラークの抑制、除去効果を高めるのに役立ちます。
● 虫歯を防ぐ
虫歯とは、プラークの中の細菌がつくる酸により歯が溶かされる病気です。虫歯を防ぐには、プラークを取り除くことがなにより大切です。歯磨剤を使えば、プラークの除去や付着防止などに効果があります。また、細菌の繁殖を抑制する薬効成分配合の歯磨剤や、歯の再石灰化の促進、耐酸性の向上といった働きのあるフツ化物配合の歯磨剤もあります。
● 歯石の沈着を防ぐ
歯石とは、プラークが唾液中のカルシウムやリンによって石灰化してできるかたい物質。歯ぐきを刺激して、腫れや出血を引き起こす原因になります。歯石を防ぐには、歯石の原因となるプラークをまず取り除くこと。歯磨剤を使ってブラツシンクすることで、このプラークを効果的に除去できます。また、石灰化をおさえる成分によって歯石の沈着を防ぐ歯磨剤もあります。すでにできてしまった歯石は、歯科医院で除去してもらいましょう。
● 病(歯肉炎・歯周炎)を防ぐ
歯ぐきが炎症を起こし、最後に歯が抜けてしまうという歯周病も、プラークや歯石の沈着が原因です。ですから、プラーク除去効果がある一般の歯磨剤を使ってブラッシンクすることは、歯周病予防のうえでも効果があります。さらに、歯周病の原因となる細菌の増殖抑制、炎症の抑制、収れん、止血、血行促進などの働きを持つ各種薬効成分(抗菌剤、消炎剤、収れん剤、止血剤、血行促進剤など)を配合し、歯周病を予防する歯磨剤もあります。
● 口臭を防ぐ
口臭の90%以上は、口の中の汚れ(プラークなど)や虫歯、歯周病などが原因です。ですからプラークや食べかすを取り除き、口中を清潔にすることで、口臭はある程度予防できます。歯磨剤顆lこはハッカ(ペパーミントやスペアミントなど)をベースにした香料が配合されているので、独特の爽快感があり、口臭を防ぐと同時に口中を爽快にします。
● 歯を白くする
歯磨剤を使わず歯の清掃を続けていると、歯が黄色ないし褐色に着色してくることがあります。この汚れはカラーステインと呼ばれ、飲食物中の色素やタバコのヤニなどによってつくられます。歯磨剤を使ってブラッシンクすることで、カラーステインを取り除き、歯本来の色を取り戻すことができます。もちろん「歯を白くする」といっても漂白や歯を削ることではありません。
■ 歯磨剤の歴史
人が歯をみがくようになったのは、1万年くらい前からであろうといわれています。世界で最も古い歯磨剤は、紀元前1500年以上前の古代エジプトの記録にその処方がみられます。古代インドでは、伝承医学書アーユルヴェーダに、歯磨剤や歯ブラシに用いる木の種類などが、詳しく書かれており、紀元前6世紀頃、お釈迦さまが歯をみがくことを奨励したといわれます。歯をみがく木「歯木」が、中国を経て、仏教とともに日本に伝わり、後に房楊枝(木の先端をくだいてブラシ状にしたもの)や爪楊枝になりました。
日本での昔の歯磨剤は塩だったようですが、商品化されたのは、江戸時代初期(1643年)に「丁字屋歯磨」が最初で、龍脳、丁字、塩、房州砂、貝殻粉末などを混ぜた粉歯磨でした。水歯磨剤は明治11年に、練り歯磨剤は明治21年に発売されたのが最初です。
以来、歯磨剤は、剤形、機能、効能・効果、品質等の改良が重ねられてきました。ことに昭和時代になってからの歯磨剤の多くは、科学的な有効性の評価データを基に、口腔保健剤としての役割を果たしています。